君がいた夏
「はー?」
「……ばーか。それは一生治らないな」
「っ………」
私が目でにらむと
桐は肩をすくめた。
「ほら、冷えただろ?これでも着とけ」
そういっていきなり差し出されたのは
桐の着てたブレザー。
「ありがと」
「ぶっかぶか」
桐はそういってまた笑った。
いつのまに、私より大きくなったんだっけ。
あんなに小さかったのに。
いや、昔から小さくても私には大きな存在だったかな。
桐の匂いがするブレザーをきて
私は思う。
やっぱり
さっきの決心はやめよう。
「桐、決心変わった!」
「は?いつ決めたやつ?」
桐の苦笑い混じりの言葉に私は
にっこり笑った
「さっき!」
そう私が言うと
桐はあの大好きな笑顔で
早すぎるって言って私の頭を叩いた。
それが愛しくて
私は桐の手を握った。
「っ?!」
「行こ!」
「お前なー……はぁ。全く、人の気もしらねーで」
「え?」
私が聞き返すとただ微笑んで
桐は私の手を握り返して
歩き出した
いつか。
桐の隣を歩きたい。
幼馴染みとしてじゃなくて
恋人として。
そして
この世界で生きていく。
お母さん
お父さん
私は前を向いて歩いてくから
ずっと見守ってて。
ずっと。
ずっと。