君がいた夏
手を繋いで歩く俺らは恋人に見えるのだろうか
紀衣の後ろ姿を見つめる
いつのまに、俺より小さくなったんだ?
昔から、少し弱い部分はあったけど
今はすぐに壊れそうで怖い。
いなくなってしまいそうで
「紀衣!」
「え、何々?」
俺は思わず繋いでた手を引っ張る。
紀衣が振り返って俺らは向かい合う。
「?」
「あ………あのさ」
「あれ?紀衣と桐?」
聞き覚えのある声
いつもは聞くと安心するのに
いまだけは少しドキリとした。
「優陽?」
「……おう。なんだよ、デートか?」
「違うよ」
紀衣がそう答える
やっぱり、まだ好きなんじゃないのか?
「………優陽はなんでこっちに?家、反対側だろ?」
「あー、菜穂を送ってきた」
優陽は嬉しそうにはにかむ。
紀衣も笑ってラブラブーなんて言ってる。
「………あ、悪い。紀衣、俺、ちょっと用事あるからさ、優陽に送ってもらって!悪いな」
なに、言ってるんだ。俺は……
醜すぎるな、嫉妬なんて。
「…おいっ!」
「……え?」
俺は足早に歩く。
結局、また俺は逃げるのか。
「くそっ」
俺が叫んだとき
「おい、桐……」
「……優陽?なんで?」