君がいた夏


「はぁ……紀衣!」

俺は走りながら叫ぶ。
どこ、行ったんだよ。

俺が足を止めたとき

「やめてください!」
「いいじゃん。遊ぼーよ」

紀衣?

まさか……

俺は嫌な予感がして声のする方に足を向けると
そこには二人の男に囲まれた紀衣がいた。

「!」

俺が走って向かうと紀衣の腕が男に捕まれる

俺の理性はそこで切れた。

「やめて」
「……紀衣!」
「っ…桐!」

俺は紀衣の腕をつかんでる手を掴む

「あ?誰だてめぇ………」

力を思いっきり片手に注ぐ

「っ?!……いってぇ!」
「その手を離せ……骨、折れるぞ」
「くそっ!行くぞ!」

二人は走って逃げていった。
俺は紀衣のそばによる

「は、…はは……から、まれちゃった」

紀衣は震えながら笑った

また、無理してる。
今までの俺はこれを見て見ぬふりしてた。
最低だった。

だけど……

足が震えてる紀衣を俺は力いっぱい抱き締めた

「き、り?」
「強がるな……泣いていい。怖かっただろ?」
「っ………うっ…く」

紀衣は座り込む。
俺はそれにあわせて座り込んだ紀衣を抱き締める

「……悪かった………ほんとに、ごめん……」
「なんで、桐が謝るのよ……」
「……結局、前に進めてなかったのは、俺だ」

そう。
いつも逃げてたのは
前を向いてなかったから。

紀衣を手放すのが怖かったから
幼馴染みのふりをしてきた。

「……桐?」
「………紀衣、俺は……」

伝える言葉なんて
これだけでよかった。

他には何もいらなかった。




「お前が好きだ」





紀衣が顔をあげる

「ずっと、好きだった………」
「う、そ……」
「……優陽に嫉妬して、さっきあんなことした。それでこんなことになった……悪い」

俺は紀衣の綺麗な髪をなでて
ゆっくり頬にあてる。

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