君がいた夏
影
「おかえり、菜穂」
教室に戻ると明美が私に心配そうにかけよってきた。
「明美・・・やっぱり、私・・」
「・・・・」
口にしていいのかな?
また、前に進めないって言われちゃうかな・・・
だけど、明美には知ってほしい。
だから・・・
一呼吸おいて私は口を開く
「先輩が、好き」
「・・・そう。じゃあ菜穂は前に進めたってことじゃん」
え?
「ま、詳しいことは放課後ね」
明美はそう言って
自分の席に戻る。
私もしぶしぶ自分の席に座る
前に進めたってどういう事だろう?
意味がわからなくて
午後の授業はあまり耳に入らなかった。
そして待ちに待った放課後。
2人でアイスティーを頼み
喫茶店で向かい合う。
「で、前に進めたってどういう意味?むしろ、進めてないと思うんだけど」
「前に進むってさ、新しい人に恋をしろってことじゃないんだよ。菜穂がちゃんと考えて、今の先輩を好きになれたことが前に進めたってこと」
「つまり、昔の先輩をずっと思ってたら、前には進めないってこと?」
「うん。だって今の菜穂は今の変わっちゃった先輩を好きになったんでしょ?」
「・・・うん」
私は小さくうなずく
「じゃあちゃんと前に進めたんだよ」