君がいた夏
そして放課後。
教室で先輩を待っていると
水で髪が濡れた先輩が息を切らして私のもとにきた。
「え、どうしたんですか?!」
「ちょっと、バスケをしてたら汗かいて…それで」
「朝の続きですか?」
「え、何で知ってるの?」
先輩が目を見開く。
私は先輩を窓際に案内する
「ここから、見えるんです」
「あー……ってことは、朝、見られた?」
「はい」
私がうなずくと少し困ったように肩をすくめ
先輩は窓に腰かけた
「……なんか恥ずかしいな」
「そうですかー?かっこよかったですよ」
私も、先輩の横にたち
夏の風を感じる
「…そういうこと、さらっと言うなって……」
「え?」
良く聞こえなくて聞き返すと
先輩は私の髪に指をからめてすく。
「……何でもない……受験生なのに、バカなことしたなーって思って」
先輩の何気ない一言に思わず少し表情が崩れてしまう
「菜穂ちゃん?」
「…あ………いえ。受験生、なんだなって……」
そうだ。
受験生なんだ。
あの時と同じ……
私が中2で先輩は中3で
受験生だった。
「……ねぇ、菜穂ちゃん、今週の土曜日あいてる?」
「え?……はい、たぶん」
「そう。じゃあ、デートしよっか」
「は、はぁ………」
先輩の提案に私は流されるままうなずき
そして、何がなんだかわからないまま、土曜日になった。