君がいた夏


「………私は、バスケ部だった先輩のこと、あの傘を貸した日より前からってました」
「……うん」
「……憧れだったんです」

優しい風が私たちを包んだ。

「憧れ?」
「はい………体育館とか校庭とかで楽しそうにバスケをしてる先輩を見るのが好きだったんです。キラキラしてて」
「キラキラ、か」

先輩が笑った。

「最初は、ただの憧れでしかなかったけど…いつからか、好きになってたんです」
「……うん」
「あの雨の日がなかったら、私は、先輩と今こうして笑えてることもなかった……隣にいれることもなかったのかもしれない」
「………だけど、隣にいる……いま、菜穂ちゃんはここにいて、笑ってる」

先輩の言葉に胸が苦しくなる。

こんな不安な気持ちを言ったら
先輩は、嫌いになるかもしれない…

信じてる。

信じてるけど

なんで、不安になるの……

「……どうして、泣くの?」

先輩が私の涙をぬぐって
優しく笑う
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