君がいた夏
そうなんだ。
前に進むって新しい恋をすることじゃなくて
“今を見る”ってことなんだ。
「そっか・・・私、前に進めたんだね」
明美は満面の笑みで私の言葉にうなずいた。
すると
「あ」
そんな声が背後から聞こえた。
振り向くと川上君が立っている
「よく会うねー」
そう川上君が言い
そんな川上君の背後に背の高い男の人が現れた。
その男の人は
私の顔を不思議そうにじっと見る
やがて
小さく呟いた。
「菜穂?」
その声に私は昔聞いた声と重ねる
彼は・・・
「桐さん?」
「そう。六藤桐だよ、覚えてるか?」
「もちろん」
私はうなずく。
忘れるはずがない。
だって桐さんは
優陽先輩の親友だった人。
「なんっすか桐先輩、高嶋と知り合い?」
「中学の頃」
桐さんはそう川上君に言うと
私を見た。
正確には私の制服を。
「・・・その制服・・・優陽は元気にしてる?」
「・・・まぁ、一応?」
「そう。アイツにも色々あったからな・・・・」
「色々って・・・?」
「え?」
桐さんは目を見開く