君がいた夏
「ま、俺が菜穂のことさらうぞ?って言ったら、正気に戻った」
「…まったく」
明美がため息をつく
「……それで話を聞いたら……菜穂と同じ気持ちだったけど…もっと違うことを考えてるぞ」
「違うこと?」
「菜穂が思ってるような理由で怒ってる訳じゃない」
私が歩を見ると
歩が、苦笑いをした
「すれ違ってるだけだよ……それに、あの人は菜穂を大切に思ってる……離れたりなんてしねぇよ…絶対に……もう少し、信じてやってもいいんじゃないか?」
歩の言葉に不安が少し軽くなった
そうだ、私が信じなくてどうするんだろう
「………まぁ、今日はあの人にも考える時間をあげてくれ…少し、あいつも過去をふりかえる時間が必要なんだよ」
「………?」
「無理して、前を見ようとしすぎてきたんだ……菜穂のことを大切だからこそ、前を見てきたんだろ」