君がいた夏
「不安になるのは、菜穂がお前を信じてないからじゃない。同じ状況だから不安なんだよ…お前が離れてしまうのが怖くて仕方ない」
そうだ。
俺は、そんなことすら見失っていた。
菜穂ちゃんは、いつも俺を好きでいてくれた
信じてくれてないんじゃない、不安だったんだな
あの子が言ってた
悲しいだけの夏だったと。
「もう菜穂ちゃんを悲しませたくない」
桐と紀衣がうなずいた。
「俺にいってどうする?」
「そう、だよな」
「行けよ。まだ6時だ」
「あぁ」
俺は、携帯と荷物を持ち家を出る。
残った紀衣と桐はため息をついた
「はぁ……疲れた」
「ふふ…あの二人もずいぶん遠回りをするよね」
「そうだな」
「でも、理想の二人かも」
桐は紀衣の横顔をみつめ
軽くその頬にキスをする
「っ?!」
「……なれるよ」
紀衣は嬉しそうに笑った