君がいた夏


「不安になるのは、菜穂がお前を信じてないからじゃない。同じ状況だから不安なんだよ…お前が離れてしまうのが怖くて仕方ない」


そうだ。
俺は、そんなことすら見失っていた。

菜穂ちゃんは、いつも俺を好きでいてくれた
信じてくれてないんじゃない、不安だったんだな

あの子が言ってた
悲しいだけの夏だったと。





「もう菜穂ちゃんを悲しませたくない」






桐と紀衣がうなずいた。

「俺にいってどうする?」
「そう、だよな」
「行けよ。まだ6時だ」
「あぁ」

俺は、携帯と荷物を持ち家を出る。


残った紀衣と桐はため息をついた

「はぁ……疲れた」
「ふふ…あの二人もずいぶん遠回りをするよね」
「そうだな」
「でも、理想の二人かも」

桐は紀衣の横顔をみつめ
軽くその頬にキスをする

「っ?!」
「……なれるよ」

紀衣は嬉しそうに笑った




< 188 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop