君がいた夏

「優陽、何も言ってない?」
「え・・・・はい」

私は少しうつむく。

「そっか・・・」

桐さんはため息混じりに呟いた
そして少し考えると
くるりと川上くんと明美の方に体を向けた。

「歩、それと菜穂の友達さん?ちょっと菜穂借りるね」
「は?!」
「どうぞー」

驚く川上くんと
平然と笑う明美

桐さん?

「ありがとう」
「わっ」

桐さんはお礼を言うと
私の手をとり、外に向かう

「ちょ、桐さん?」

引っ張られながらも桐さんを見上げる。
桐さんもやっぱり少し大人びた気がする。

元々整ってた顔立ちや
無造作にワックスでかたまってる髪の毛。

見ていると桐さんは止まる

「あれ・・・・ここ」

桐さんは
近くの公園に私をつれてきた
自販機で買ったらしきジュースを私に差し出す

「菜穂・・・優陽がさ、自分のことをあまり言わないのは」
「え?」

唐突に始まった会話。
私は桐さんを見る

「・・・菜穂は優陽のすべてを知りたいと思う?」
「・・・できるなら。その秘密が彼を苦しめてる気がするから」
「菜穂は優陽を良くわかってる」

桐さんは笑う

「アイツが菜穂に話してないなら、俺は言う気はない」

言わない?
てっきり教えてくれるかと
思っていた。

「はは、ごめんね。・・・だけど、やっぱり優陽が言いたくないなら言わない方が良いと思うんだ」
桐さんはベンチに腰を下ろす
私もつられて座る

「ただ、アイツは苦しんでる。・・・・・誰にも頼らず生きてこうとしてる」

< 19 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop