君がいた夏

「・・・・苦しんでる?」
「うん」

桐さんはうなずく。

「菜穂、だけど君は、優陽の心を開けられると思うんだ」
「え・・・?」
「今は多分、開こうとしてないだろ?」
「・・・・うん・・・」

桐さんは微笑んで
私の頭を撫でる

「いつか、誰かそばにいてほしいときがアイツにはくるから・・・その時優陽のそばにいてやってほしい・・・」
「・・・・・私なんかで良いのかな?」
「菜穂だからいいんだよ」

桐さんはそう言うと
立ち上がる。

「ま、その時君に特別な人がいたら別だけど」

桐さんは笑う。

「はい」

私もつられて笑う。

先輩、もし私があなたの心を開ける日がきたら
きっとあなたの苦しみを軽くしてみせるから。

あなたの心にある影を
私が光にかえてみせるよ。

だからお願いだから。
苦しくても、あなたの本心は失わないで

「桐さん、わたし優陽先輩が好きなんです」
「・・・・・」

桐さんは
わかってたみたいにうなずく。

「先輩がどんな変わっても多分、嫌いなれないです」

自分の気持ちを口にしたら
涙腺が少しゆるんだ。

桐さんは
泣き笑いの私を優しく見守ってくれた。

「だって、先輩の優しさを知ってるから」
「・・・・そうだな」

桐さんも笑う
優陽先輩の溢れんばかりの優しさを私たちは知ってる

「さ。戻ろう」
「はい・・・・」

私たちは
喫茶店に戻った。

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