君がいた夏
私は少し後ろを歩く
しばらくの沈黙があった
やがて
人通りが少ない道で
川上くんは口を開いた
「・・・・なぁ」
「え?!」
私は驚いて思わず大きな声を出す
「ははっ、そんな驚かなくても」
「ごめん・・・で、何かな?」
「あぁ・・・えっと、先輩・・・桐さんとは付き合ってたの?」
唐突に出た言葉に
思わず動きを止める
「いやいやいやいや!!!ないから、付き合ってないから」
「そうなの?」
私は全力で首を縦にふる
「なんだ」
川上くんはそう言うと
前をまた向いた。
「・・・・じゃあ、あっちか」
「え?」
川上くんが呟いた言葉が聞き取れなくて私は首をかしげる
「いや。こっちの話」
川上くんはまた無邪気に笑う
「え、何それー」
私は
川上くんの顔をみる
だけど
街灯に照らされた川上くんは
いつもと変わらず優しい顔をしていた
「・・・・・」
不覚にも少し
ドキッとしてしまった
私の目に映る川上くんは
なぜか大人びて見えたから
私よりうんと高い背
しっかりした体
短髪のためか、少し筋っぽい首がよく見える
「なに?」
私の目線に気づいた
川上くんは首をかしげる
「何でもない」
私はまた前を向く
見ていたことに気づかれて
少し恥ずかしくなった