君がいた夏

「ふーん」

そう言った川上くんも
また前を向く

少し気まずい沈黙が流れた

「あ」

その沈黙を川上くんが破る

「なに?」
「俺、高嶋のメアド知らねー」
「あー、いる?」
「おう」

頷く川上くん
なんか可愛い。

携帯の赤外線の部分を近づける

「はい」
「さんきゅ」

送信終了の文字をみて
私は携帯を閉じる

「じゃ登録しとくな」
「うん」

するとちょうど
家につく

私は川上くんと向かい合う

蒸し暑い風が2人の
短い沈黙の中を通り抜ける

「・・・・じゃあ、また」

今度の沈黙を破ったのは
私だった

「おー」
「メールしてね」
「ん、了解」

そう言って川上くんは
歩き出す

後ろ姿を見送って
私は家に入る

「ただいま」
「おかえり、菜穂」
「お腹すいた」
「はいはい」

お母さんは
ご飯の準備を始める

ソファにあるクッションをめがけて倒れる

「・・・・」

クッションに顔を埋めて
深いため息をつく

「だらしないんだから、この子はー」

お母さんはそう言って
私の頭を小突く

「いたい・・・」
「ほらご飯よ」

そう言うお母さんに私は顔を埋めたまま
小さく問いかける

「・・・お母さん、もしお父さんが苦しんでたらお母さん、どうする?」

お母さんは
そうねぇと少し考える

「話をとことん聞いてあげる、それでその後抱き締めてあげちゃうかなぁ」

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