君がいた夏

「そんなっ・・・・・」

じゃあ先輩は?

「・・・・んな顔すんなよ。母さんの方についてったよ、体調も悪そうだったしな」

先輩は変わらず笑う
だけど
すごく辛そうだった。

「・・・・でも、結局・・・俺はっ・・・」

そこまで言った先輩は
強くアスファルトにおかれた手を握ってた

「っ」

それを見た私は
もう我慢できなかった

「先輩・・・・」

気がついたら
先輩を抱き締めていた

「・・・・もう、いいです。もう言わなくていいから・・・・」

先輩を包んでる腕に
力を込めた

「・・・・菜穂ちゃん・・・」

私の名前を
小さく呟いた先輩の声は
中学の頃の先輩のような優しくて温かい声だった

「・・・先輩、私はずっとここにいます。先輩が例え独りで苦しもうとしても、ずっと近くにいますから・・・今は先輩のそばにいたい・・・・」

素直な気持ちを吐き出した

「・・・はっ・・・・いつからそんな女の子になったんだか」

先輩は私の腕のなかで
笑った

「・・・・馬鹿だな・・・」

そう言った先輩の片手が
私の抱き締めてる腕に触れた

「ホント馬鹿だ・・・・」

少しだけ
触れた片手に力が入った

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