君がいた夏
「菜穂っ」
次の日の中休みの時間
私は明美の声でようやく
読んでいた本から顔をあげる
「廊下、廊下」
明美は笑いながら
ドアを指差す
そこには
「優陽先輩っ?!」
思わず
勢いよく立ち上がる
「あ」
周りを見るとみんなこっちを向いている
明美は吹き出しそうなのを
必死にこらえてる
「っ」
頬が熱くなるのが分かる
気まずくなり私は足早に
先輩のもとに行く
「くっ・・・・ははっ」
先輩は口を押さえてうつむいて
肩を震わせてる
・・・笑われてる?
「・・・笑わないでください」
「ごめっ・・・・くっ」
「っ~~~・・・・先輩っ!」
私は無理やり
先輩を近くの資料室に連れていく
「もー・・・」
「ごめん、ごめん」
「で、何のようですか?」
「あ、えっと」
先輩が珍しく言葉をつまらせてる
なんか可愛いかも
「こないだは、ありがとな」
「え?」
「あ、いや、だから。・・・屋上で・・・・」
先輩は口に手の甲を当てる
照れてる?
私は自然と笑みがこぼれた
「どういたしまして」
「・・・なに笑ってんだよ」
「別になんでもありません」
「なんだよ、人がせっかく・・・」
ぶつぶつ言う先輩を見る