君がいた夏

この人の特別にもう一度なったら
どうなるんだろう?


もっと
手を繋げるかな?
声が聞けるかな?
寄り添えるかな?

そんな
愛しさや恋しさが
私の胸を支配していく

ふいに
窓越しの日差しにあたる先輩の手に私の手を伸ばした

ゆっくり触れる私の右手と


先輩の左手

「・・・・菜穂ちゃん?」

彼の悲しみを知りたい

まだ抱えている苦しみや
我慢している涙を

私に

私だけに

見せてほしい。

「先輩・・・私は、先輩が苦しんでる理由がまだ全て分からないけど・・・それでも、先輩の苦しみを少し分けて欲しいです」

先輩の左手がかすかに震えた
私は強く握る

「・・・・だから、先輩。辛いときはすぐにかけつけます」

私は笑う

「菜穂ちゃん・・・・」
「さ、帰りましょ」

私は
体の向きを変えて

ドアに歩き出そうと一歩踏み出した・・・・・・はずだった。

気がついたら
私は先輩の腕の中にいた

どうやら
繋いでいた手を引き寄せられたらしい

「先・・・・輩?」

胸の音がうるさく響く

ドクンドクンと体中に
響き渡る

「・・・・菜穂ちゃんは、眩しいよ」

そう言った先輩の腕に少し
力がこもる

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