君がいた夏
「え・・・・?」
「いつも、真っ直ぐで、素直で、ずっと変わらない・・・・俺は菜穂ちゃんに優しくされる価値がある奴なんかじゃない・・・」
「先輩・・・・」
先輩の髪が頬にあたる
私は、ゆっくり先輩の背中に手を回す
資料室の窓から入ってきた風が私たちを包む
「・・・・悪い」
少しの時間のあと
先輩は私を離す
まだ胸がドキドキしてる
顔が、熱い
「菜穂ちゃん・・・・」
「え?」
先輩は肩に手をおいたまま
私を見つめる
「俺・・・・」
え?
先輩は真面目な顔をしてる
キーンコーンカーンコーン
私たちの間に
中休み終わりのチャイムが鳴る
「あ・・・・」
先輩の手から力が抜ける
何だか恥ずかしくなってきた・・・
そう思った時
先輩の携帯が鳴った
「・・・・悪い」
先輩の手が離れる
「はい」
先輩が携帯に出る
電話だ
ヤバい
心臓がうるさい。
そんなことを思ってたら
先輩の声が耳に響く
「・・・あ、きい?」
きい・・・・?
私の顔から熱が冷めていくのを
感じた
だって電話から聞こえたんだ
高い
可愛らしい
女の子の声が。