君がいた夏
「電話・・・多分、女の子だった」
私は昼休み
明美とご飯を食べながら話していた
あの後
先輩は急いで学校を出てった
私はそれを見送り
教室に戻った
あの言葉の続きは
なんだったのだろうか?
「あの最低最悪男め」
明美は
お怒り中だ。
「普通、抱き締めた相手を放っておくか?」
「・・・・あはは」
「ありえないっ」
私も傷ついてないと言えば
嘘になる
ホントは
少しだけ期待してた
先輩は
私のことを好きでいてくれてるんじゃないかって
だけど
そんな期待は
呆気なく
私のもとから去った
「でも菜穂」
「ん?」
「多分先輩は、菜穂が好きだと思うよ」
「どうかな」
「・・・菜穂が辛いなら、諦めてもいいと思うけど、その“きい”って子が誰か分からないままなのに諦めるのは早いと思う」
私はうなずく
「あの、桐さんだっけ?聞いてみなよ」
「あ、そっか!!!」
私は
すぐに携帯を取り出す
「外で電話してくる」
「うん」
携帯を握りしめて
裏庭まで行く
電話帳を開き
発信ボタンを押した
『はい』
「桐さん?」
『どした?』
「優陽先輩のことで聞きたいことがあって」
『えっと・・・ちょっと今はあれだから、放課後にこないだの喫茶店でもいい?』
桐さんは
何故か小さな声で言う
「わかりました。じゃあ、また後で」
そう言って電話を切る
「はぁ・・・・」