君がいた夏
放課後の喫茶店
私と桐さんは向かい合って
座っていた。
「で、聞きたいことって?」
「あの・・・・」
「ん?」
私はアイスティーを一口のんで喉を潤す
そして
勇気をふりしぼって
小さく呟いた
「きいさんって人・・・・誰か、知ってますか?」
その言葉に明らかに驚いている桐さん
「・・・なんで、菜穂が知ってるの?」
「それは・・・・先輩が電話してるのを聞いてしまって・・・」
私の小さくなる言葉を耳にした桐さんは更に目を見開く
そして大きなため息をひとつ吐いた
「なんで、紀衣とまだ連絡とってんだよ・・・」
え?
てことは、桐さんは“きい”さんを知ってるの?
「誰なんですか?」
「紀衣っていうのは、俺らの幼なじみみたいな感じかな・・・ただあくまで俺にはな」
俺には?
「優陽先輩にとっては?」
ぎゅっと手に力を入れる
「・・・わからない。ただ、菜穂にはキツい話しかもしんねぇけど・・・・・多分、紀衣は誰よりも優陽の苦しみや気持ちが分かる、唯一の存在かもしんない」
唯一の、存在・・・
そんな言葉が胸に突き刺さる
「アイツの過去、もう、全部知ってる?」
「・・・両親には別々に違う相手がいて、2人とも新しい家族が出来ていたことは聞きました・・・・」
「そこまで聞いたんだ。・・・・じゃあ、もう良いのか」
桐さんはそう言って
私を見つめた。
そして
ゆっくり 紀衣さんという存在や
3人の過去を話し始めた。