君がいた夏

紀衣は、少し冷たい笑みを浮かべた

そして
一瞬にしてその笑みは消えた

「紀衣・・・?」
「・・・・んでよっ」

そう紀衣は声に出すと俺の制服の襟首をつかみ
壁に押し付けた

「なんで、後輩なの・・・?」
「・・・・え?」
「なんでずっと近くにいた私じゃないの。なんでよっ?!」

紀衣は泣きながら
俺の胸を叩いた

紀衣は、俺に恋愛感情を抱いてた

そんな事もしらず
菜穂ちゃんと付き合えたことを
俺は笑って報告してた。

いったいどれ程
紀衣を傷つけていたんだろう。

紀衣は大事だ。
だけど、やっぱり、俺は・・・

「・・・・紀衣、ごめん。紀衣は大事だけど・・・・今は守りたい人がいる」
「・・・・・っ」

紀衣は力が抜けるように
俺の胸に倒れ込み泣いていた

「・・・もう、元通りにはなれないよ」

そう呟いて紀衣は離れた

「彼女のとこ行って、待ってるんでしょ?」
「あぁ・・・ごめん」

俺は教室をあとにした
最後にみた紀衣は優しく笑ってた


校門に出ると菜穂ちゃんがいた

「優陽先輩っ」

そう言って笑う菜穂ちゃんが何故かたまらなく愛しくて
つい抱き締めてしまった

「せ、先輩?」
「ごめん。・・・少しだけこのままでいたい」

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