君がいた夏


「桐さんと、なんの話してたの?」
「ん?・・・・まぁ、色々」

私は言葉を濁して受け流す

「そっか」
「・・・・・あの、さ」
「ん?」

川上くんが私の顔をのぞく

顔、近い。

間近で見るとやっぱりきれいな顔をしてる

「っ」

ちょっと心臓が跳ねる

「なんだよ?」

笑いながら川上くんが顔を離す

「いや、その・・・・」

私は
心臓の音がばれないように
少しうつむいた

私、何でドキドキしてんの
好きな人がいるのに

「例えば、川上くんに好きな人ができて、だけど、その人に大切な人がいたら・・・川上くんならどうする?」

川上くんは何故か立ち止まった

「・・・・え?」

私は後ろを振り向く
川上くんは少し寂しそうに微笑んだ

「・・・俺なら、諦めたくないかな」

そう言った

穏やかだったけど
はっきりした声だった

「辛いかもしんねぇけど、好きだから、諦めたいとは思わない」


そう言って
川上くんは歩いて私に追い付く

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