君がいた夏


「川上くんらしい」

私は微笑んだ

好きだから、諦めたくない
諦められない

「そうか?・・・・そうだな、もし、高嶋が諦めたくないけど、でも本当に辛くて苦しくなったら、俺が助けてやるよ」

川上くんはそう言って
私の頭を撫でてくれた

「・・・・ありがとう」

私は泣きそうな声で言った

だって川上君の手があまりにも優しくて
少しだけ、全てをあずけてもいいかなって思ってしまったんだ。



「じゃ、俺はここで」
「送ってくれてありがとね」
「おぅ」

手をふって
遠くになっていく川上くんを
見つめていると

急に、川上くんが振り返った

「菜穂っ」
「え?!」

いきなり名前を呼ばれて
私は肩を揺らす

「俺も、負けないから」
「よく聞こえなーい」

私は耳に手をあてる

「ぷはっ」

川上くんはそれを見て笑う

「?」
「いや、またな。菜穂」

街灯に照らされた川上くんは
今までにないくらい
大人っぽくて私はまっすぐ見ることができなかった

「・・・・またね、歩」
「っ・・・おう」

ホントは少し
先輩を思うことに疲れていたの

だから
川上くんに甘えてしまった

もし
先輩の苦しさをもっと理解していたら
私はもっと先輩のそばにいたと思います

ごめんね。

先輩…………



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