君がいた夏
「私は大丈夫ですから。先輩や紀衣さんの苦しみに比べたら、こんな悲しみ・・・」
抱き締める腕に力をいれる
先輩は一瞬笑ったような気がしたけれど、すぐに私の腕に触れた
「先輩・・・昔みたいな、関係に戻れませんか?・・・・私、先輩の苦しみも悲しみも全て包みたい」
素直な気持ちを口にした
ただ先輩がしっかり抱き締め返してくれれば良いって思ってた
だけど
腕に触れた手は呆気なく私と先輩の体を離した
ゆっくり視界に入る先輩の表情はひどく切なかった
「・・・・ごめんね」
もう戻れない
先輩は紀衣さんを守らなくてはいけない
昔、誰かが言ってた
“守りたい2つのモノのうち守れるものは1つだけだ”と・・・
先輩は
紀衣さんを選んだんだ
私は
フラれたんだ