君がいた夏
「優陽は、責任感に縛られてるだけだ。紀衣を支えてやるのは確かに俺らなんだと思うけど・・・紀衣を支え続けるのは、紀衣のためにならない」
「・・・」
私は下を向く
「優陽は我慢してる。紀衣のために、自分の気持ちを」
そんな事
今さら言わないでほしい
わからなくなるよ。
先輩への気持ちを押し込めて消していきたかったのに。
「違う」
「菜穂?」
私は首を横にふる
「先輩は責任感でそばにいるわけじゃないよ。守りたいって思ったから・・・そばで支えてる」
「・・・・・」
「それぐらい紀衣さんが、大事なんだよ」
自分に言い聞かせるように
だけど
なんで、こんな苦しくなるのだろう?
「・・・・菜穂、今はまだ、先輩を好きでいていいんだよ。そんなすぐ、諦められる人なんていないから」
明美が私の手を握る
「ゆっくり、新しい恋をしていこ?」
「・・・ん」
私はうなずく。
「・・・まったく女は凄いよ。俺は優陽の方に行く。アイツにも明美ちゃんみたいな友達が必要かもな」
そう笑った桐さんは足早に喫茶店を出ていった