君がいた夏

「川上ー!!!実行委員のくせに、仕事さぼんな」
「・・・・わーってるよ」

そう叫んだ歩。
女の子はすぐにいなくなった。

「実行委員なの?知らなかった・・・・」
「あー・・・会議はサボってたから」
「だからか・・・・」
「さ。戻ろうぜ、菜穂も実行委員だろ?」
「うん」

私は歩の後ろについて屋上を出て階段を下りる。

「菜穂、辛かったら、すぐ言えよ。俺がいる」
「うん、ありがとう・・・・」

そう言って階段を下り終わった時
人が行き来してる中ですら見つけてしまう。

彼は歩いてる足をゆっくり止める。

「菜穂ちゃん・・・・」
「・・・優陽先輩」
「・・・・良かった」

先輩は、歩を見て、その後私に目線を移してそう言って笑った。

良かった?

どうゆう意味?

「菜穂?大丈夫か?」
「・・・・・・平気だよ、行こ。歩」

私は、歩の手を引っ張る。

「菜穂・・・・」

後ろは見たくない。
だって先輩の顔を見たら、泣いてしまうから。

なんで、私を見てそんなに切なそうな顔をするの?
悲しそうな顔なんて見たくないのに。

「菜穂ちゃんは、俺じゃダメだよ・・・・」

そう呟いた先輩の声が耳に入って、思わず振り返る。

先輩は、もう反対方向に歩き出していた。

「意味・・・・わかんない・・・・・」
「菜穂?」
「・・・・ごめん、行こう」

先輩、あなたが何を考えてるのか分からない。
なんで、何も言ってくれないの。

「・・・・菜穂?」
「あ、ごめん、なに?」
「教室、着いたよ?」
「あ・・・・」
「大丈夫かよ?」
「大丈夫だよ」

私は笑った。

後ろばっか振り向いて、ダメだな。
もう、前を向かなきゃいけないのに・・・

「じゃね」

私は、顔をあげて笑う。

「あぁ」
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