君がいた夏
「川上のバンド、始まるよ」
「うん…行こっか」
ホールに向かう途中で明美が唐突に話し出した
「菜穂………やっぱり先輩は、菜穂が好きだよ」
「明美?」
「なんで、菜穂も先輩も自分の気持ちに嘘をつくんだろ…」
明美の言葉に私は立ち止まる
嘘なんてついてない。
ただ今は…
「ごめん、明美。今は、何も考えたくない」
そう言うと明美は小さくうなずいた
ホールは満員だった
私達は立ってみることにした
「あ、歩だ」
「おー」
しばらくすると歩達が出てきた
歩はギターを確認して
マイクに手を伸ばす
「えー…代理でボーカルをやります、川上歩っす。代理で申し訳ないんですけど…頑張りますんでよろしくお願いします」
拍手が起きる
そしてドラムがリズムをとり曲が始まった
「うわぁ…」
「え、川上うまいじゃん」
歩はすごく上手くてつい口があいてしまった。
そして、バラードやロック系の歌を歌いラストの歌になった
「えー…ラストは定番のラブソングです。片想いの曲だそうです。歌詞の中で、諦められるような恋ならあなたを思って泣いたりしないってとこがあんですけど…すげぇ良いんでよく聞いてください」