君がいた夏

歓声が上がる

「女性目線ですけど、男子も好きな人を思って聞いてください」

その時
一瞬歩と目があった気がした

気のせいかな?

「それじゃ、your love」

その歌はホントに良かった。
会場では泣いていた女の子もいたほどだった

“諦められるような恋ならあなたを思って泣いたりしない”

何故かこの歌詞が
私の胸に染み付いて離れなかった

舞台が終わってホールはものすごい歓声で包まれた



文化祭も終わりに近づき
後夜祭が始まった

「ふう。これで運ぶのは終わりかな?」

実行委員の仕事で体育館裏に荷物を運び戻ろうとしたとき

「……誰?」
「へ?!」

暗闇の中で誰かの声がした。
この声は…

「歩?」
「菜穂か」
「またサボり?」
「バンド疲れ」

笑う歩
私は歩の横に腰を下ろす

「バンド、凄かった」
「…さんきゅ」
「歩、別人みたいだったし。びっくりしちゃったよ」
「はは…めっちゃ緊張したけど」

私は歩の横顔を見つめる
歩に聞きたいことがあった

「ん?」
「バンドの時…目、あわなかった?」
「…………」
「…え、勘違い?」

沈黙に私は戸惑う
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