君がいた夏
私の目線の先には、優陽先輩とその横で笑う紀衣さんの姿。
先輩の持つ傘に二人で並んで歩いていた。
もう。
先輩は、前に進んでいた。
明美に、先輩は私のことが好きだって言われて、少しだけ、ほんの少し期待していた自分がいた。
「バカだなぁ・・・・」
そんなことなんて、なかったんだ。
先輩は、紀衣さんの隣を選んだ。
紀衣さんを隣に選んだんだ。
私じゃなかった。
先輩を思うことに疲れてた?
違う。
ホントは、先輩にふられるのが怖かっただけだ。
紀衣さんが先輩の隣にいるところをみるのが怖かっただけだった。
今さらになって、気づいて。
気づいた時にはもう遅くって。
いつも、先輩に手が届かない。
それを見せつけられた。
ただ、呆然と立ちすくむ私の上に傘が出された。
振り返ると、そこには歩がいた。
「・・・・歩?」
「なに、してるの・・・・」
呆れたように、でも、切なそうに私を見つめ手をつかんだ。
「来い」
「・・・・うん」
私はひっぱられながら、屋根のある場所に連れてかれた。
「ほら」
渡されたのは大きなバスタオル。
私がうつむいてると、歩は頭にかけて、ふいてくれた。