君がいた夏
「ここって・・・」
「俺の、マンションの休憩ルーム」
「そうなんだ」

私はバスタオルをつかんで顔をあげる

「自分で、ふくよ。ありがとう」
「おう」

私はふきながら、目を固く閉じた。

「っ」

ふいに、歩の手が私の頬に触れる

「泣いてんの?」
「え・・・・」

私は初めて涙が出てたことに気づいた。

「ほんと、だ」

そう言って笑うと、歩が私を抱きしめた。

「なんで、アイツなんだよ。お前を苦しませるだけだろ?・・・・どうして、そんなに傷ついてるのに、アイツを思って泣けんだよ・・・・」
「歩?」
「もう、苦しんで泣いてるとこなんて見たくねぇよ」

私は歩の言葉に、少しだけ笑って、歩の腕をつかんだ


本当はこの温もりにすがりついてしまいたい。
だけど、歩の優しさに頼るのはただの、弱さだから。

「なんでだろうね。自分でも分かんないの」

ゆっくり自分の気持ちを自分の言葉で伝えていく。

「あんなに、裏切られてるのに、先輩を思って泣いちゃうのは、多分・・・先輩がどんなに辛いか、知ってるから。同情かもしんないし、ただのバカだけど、どうしても、先輩を・・・・」
「ちょっと待って」

さえぎる歩。
私は歩の顔をみる

歩は切なそうに笑って、私の肩を掴んだ

「先に、俺をふって?」
「え?」
「もう、気づいてるだろ?俺の気持ち」

< 73 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop