君がいた夏
「で、菜穂はどう思ったの?」
「そりゃ、かなり傷ついたけど・・・」
「けど?」
「もっと、好きだってこと実感した」

素直に言ってみた。
明美は微笑みながら話の続きを静かに待っていた。

「やっぱり、傷ついたってことは、私はまだ先輩を好きでいるってことだと、思ったの」
「全く・・・」

明美はため息混じりにそう呟いて、笑った

「菜穂、気づくの遅すぎだから!」
「え?!」
「菜穂さ、ずーっとどんなことがあっても、先輩のこと目でおってんだもん。距離を離されたって、紀衣さんのことがあった時だって・・・」

明美は私の目を見つめた。
その瞳には、真剣さのなかに優しさが含まれていた。

「菜穂のそんな優しさとか、まっすぐさが先輩を捕まえてるんだとおもうよ」
「先輩には、紀衣さんがいるから」

私は何気なく呟いた。

「そうかもしれないね。でも、菜穂。好きでいるって決めたんでしょ?」
「うん」

私はうなずいた。

「だったら、菜穂は菜穂らしくぶつかっていきなよ!・・・先輩が思ってることなんて、先輩しかしらない。他の誰も知らないんだから」

明美は私の頭を撫でた

「明美・・・ありがとう」
「私はいつでも、菜穂のそばにいる。親友でしょ?」
「・・・うん!」

私は泣きそうになりながら何度も頷いた。

「まぁ、でも。私の意見は変わらないから」
「意見?」
「先輩は菜穂を好きだと思うよって意見」

私は苦笑いをこぼした。
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