君がいた夏
目をそらそうとしたけれど
体が固まったように動かない。
どうしよう。
そう思って手を強く握った、その時だった。
先輩は一回、目をそらすと、すぐにもう一度私を見て
小さく笑って、ガッツポーズを私に向けた。
「・・・・・・っ」
どうしていつも・・・
先輩は私の胸をこんなにも早くさせるんだろう。
私の胸を締め付けさせるんだろう。
私は戸惑いながらも
先生の目を盗んで、小さくガッツポーズをした。
うまく笑えていたかはわかんないけど。
先輩は少し目を見開いた。
そんな先輩の姿を見ていたかったけど
私は先生の視線を感じて、前を向くしかなかった。
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムがなるまで、私は外を見れなかった。
先生の視線もあるけど
後から考えたら、すごく恥ずかしいことをしていたかもしれないと、思ったからだ。
まず、付き合ってもない、しかも元カレという立場の人にガッツポーズを返すって・・・・
「はぁ・・・・」
なんか、恥ずかしい。
どうしよう。顔会わせられない。
元々あんまり、会わないけど・・・
「どーしたの?」
「明美・・・・」
私は伏せてた顔を上げて
授業中のことを話した。
「先輩、やるねー」
「いや、だって、付き合ってないからね?」
「・・・・ねぇ、菜穂。やっぱり、先輩は菜穂のこと好きなんだよ。好きじゃなかったら手なんてふらないはずだよ?」
「・・・・・期待しないわけじゃないの。心のどこかでそう思ってる自分もいる」
「だったら」
「でも、期待して、また傷つくのが怖い・・・」
私は小さくうつむいた。
期待すればするたびに、傷ついてきたから。
もう、期待はしたくない。