君がいた夏
「そりゃ、好きだった気持ちに嘘なんてないよ。でも、優陽先輩に言われるのは、何か気に入らなかったんだ。だから俺、『あんたも好きなんだろ?だったら、なんでそんなこと俺に頼むんだ』って言ったんだよ 」

歩がそこまで言うと
帰りのホームルームが始まるチャイムが鳴った。

私たちは屋上に移動することにした。

「それで、優陽先輩は何て言ったの?」

明美が食い入るように歩を見てる。

「俺にはそんな資格なんてないって。菜穂ちゃんを幸せにできないから、隣にいることなんてできないって。そう言ってた。・・・あの人は、菜穂の幸せしか考えてなかったんだ」

私はただ、呆然としていた。
先輩が、そんなこと?
だって、先輩には紀衣さんがいるはずじゃ・・・

そんな私の気持ちを読んだのか
歩が私に微笑んだ。

「なぁ、菜穂。桐先輩から聞いたんだ。やっぱり、菜穂が優陽の一番だって」
「え?」
「そのあとは、優陽先輩に菜穂の気持ちを伝えてから聞いた方が良い。何があっても、自分の気持ちを押さえるなよ。あとは菜穂にかかってる」

私は下を向いて
もう一度前を向いた。

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