君がいた夏
愛しい人
二人が出てからしばらくして、ドアが開く音で
私はゆっくり振りかえる。
胸がすごい早く
大きく動いている。
「菜穂ちゃん?」
「・・・優陽先輩」
そこには、いつもと変わらない
愛しい人が立っていた。
「城田の妹と、川上に呼ばれたんだけど・・・話って何かな?」
私は大きく深呼吸をして
先輩に近づく。
「先輩・・・先輩は不器用な人ですね」
「いきなり失礼な後輩だな」
「すみません。・・・でも、ホントに不器用で、でもすっごく優しくて・・・」
先輩は笑顔のまま
だけど、どこか穏やかな表情をしてた。
「私は、そんな優しさにすら気づけなくて・・・ホント、ダメな彼女でした」
「そんなことない。・・・そんなことないよ。菜穂ちゃんはいつも笑ってて俺を幸せな気持ちにさせてくれた」
私は涙を必死にこらえた。
こんな、はずじゃないのに。
「菜穂ちゃん、きみを、すごく傷つけてきたと思う。君は、俺といても幸せになれないよ。だから・・・」