君がいた夏
抱き寄せられた私は
先輩の香りに包まれた。
「・・・ごめん、俺のワガママで菜穂ちゃんを傷つけた。でも、もう。離したりしない。・・・菜穂ちゃんを幸せにしてみせるから、だから・・・」
「もう一度、付き合ってもらえますか?俺のそばにいてほしい。・・・菜穂ちゃんがいないと、ダメみたいだから」
そう言った先輩は
わずかに抱き締める腕の力を強くした。
私は震える手で先輩を抱き締め返す。
「・・・・・はい・・・・」
涙が頬を伝う。
胸のなかを温かい気持ちが支配していく。
この長い期間を埋めるように
私たちは抱き合った。
そして、顔を見合わせて
お互い笑いあう。
「菜穂ちゃん、好きだ」
「・・・私も、大好きです」
残りの空白を埋めるように
ゆっくり唇を重ねた。
やっと
気持ちが通じあった。
あなたの笑顔を見れる
あなたの隣を歩ける
そんな幸せを噛み締めながら
ただ
目を閉じていた。