君がいた夏
ホントに先輩の隣をあるいてる。
ずっと憧れてた、場所。
帰り道はすごく早く時間が過ぎて
あっという間に私の家についてしまった。
「ここ?」
「はい」
「覚えておくわ」
そう言う先輩。
離れたくなくて、思わず抱きついてしまう。
「菜穂ちゃん?」
自分でもすごい大胆だってわかってるのに。
離れたら、またいなくなってしまう気がした。
「すみません、先輩」
私は体を離そうとして、顔をあげる。
だけどすぐに、先輩は私を強い力で抱き締め返した。
顔は先輩の体に押し付けられる。
「先輩・・・?」
「菜穂ちゃん、俺は、どこにもいかないよ」
まるで、私の考えを知っているかのように
耳元に響く言葉。
「もう、菜穂ちゃんを置いてってたりしない」
「はい・・・離れないでください」
そう私が言うと、先輩はゆっくり体を離して
おでこに軽くキスをした。
「それから、俺のことは優陽でいいよ」
「え、でも」
「彼氏なんだし」
「わかりました」
私は笑う
「それじゃ、菜穂。おやすみ」
「優、陽・・・おやすみなさい」
私がぎこちなく呼び捨てをすると
先輩は満足そうに笑った。