君がいた夏


しばらくして私も屋上をでる。
泣いたままの濡れた瞳を人に見られないように
うつむきながらドアに向かう。

ドアを開けた瞬間

ドンッ

「きゃっ」
「うわっ」

誰かとぶつかった。

「っと。スミマセン!!大丈夫っすか?」

私はよろけた体を上手くバランスがとれず尻餅をつく。

「・・・大丈夫、です・・」

私は顔をあげ答える。

その人は
私の顔を見たはずなのに
私の腕を無言でつかみ起き上がらせる

「怪我、させた?」
「違うんです。大丈夫です」

どうやら
泣いたのは自分の責任だと思ったらしい。

「そっか。良かった、ホントごめん。それじゃ」

私の返事を聞くと彼は
無邪気に笑った。

「あ」

いつの間にか涙が乾いていることに気づいた。

まだ残る悲しみもある。
だけど
いまの先輩を少し知れたことや
言いたいことを言えた、という爽快感もあった。

少しだけ
気が晴れた気がする。

「よしっ」

私は顔をあげ
教室に向かった。

明美は
私を見つけるとすぐに話を聞いてくれた。

私が後悔はしてないと言うと
明美は笑って、嬉しそうに私を見つめてた




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