君がいた夏
あっというまに、時間は過ぎて
私たちは遊園地をあとにする。
帰る時間が近づいてきていて、ふいに沈黙がおとずれたとき
「公園、よらない?」
「え?」
先輩がそう呟いた。
二人で公園のベンチに座る。
「あー、楽しかった!」
「はい!」
「菜穂ちゃんも、楽しめた?」
「すごく、楽しめました。単に楽しかっただけじゃなくて、先輩がいたから、何倍も楽しかったんだと思います」
「菜穂ちゃん・・・・」
少しだけ気恥ずかしくなって、私は立ち上がる。
「先輩、私とこうやって、一緒にいてくれてありがとう」
そう言ったらふいに抱きしめられていた。
「先輩・・・?」
「・・・俺も、すげぇ楽しかった。菜穂ちゃんがそばにいることが、ほんとに幸せだって思った」
「うん・・・」
抱きしめる力を少しだけ強くした先輩
私も握っていた先輩の洋服の裾を強く握る
「こんな、一度は菜穂ちゃんを傷つけた俺を、好きでいてくれて、ありがとう・・・好きだ」
「っ・・・・うん・・・・私も、大好きです」
自然とあふれでる涙。
私はきっとこの日を忘れることはない。
先輩との思い出を忘れることなんて
これからも、きっとないんだと思う。