君へココナッツ
都会とも田舎とも言えない、その中間の町。
交流だって浅くも深くもないし、静かに暮らしたい人にピッタリの住宅街。
近所は約500m先にしかいない、まわりは芝生だらけの土地。
そこのブリーダー家で生まれた。
チャンピオン犬の繁殖に人生を捧ぐ飼い主は、繁殖以外に何も興味を持たなかった。
産ませては売り、そのお金で世話用品を買い、また産ませ、売るの繰り返し。
産まれた仔犬どころか、産ませている犬にさえ、愛着心がない。
長年付き合ってきた家族だというのに、飼い主にとって自分達犬は、"繁殖"のための材料に過ぎなかった。
チャンピオンとして輝かせるのを見るだけ、自分達に目を向けようともしない。
そんな中で、私は名前も付けてもらえないまま、繁殖に励まされていた。