Never Magic
「でも、悪いけど俺はまだ帰れない」

何となく予想していた。

「何故…」

「俺はまだこの人間界について学ぶ事が沢山あるんだ。母さんと父さんに紙切れ一枚で出てきたのは悪かったって思っている。だけど、まだ帰れない…」

司はそう言うと、眼鏡ケースを取り出した。
眼鏡を取り出すと掛ける。
…本当、眼鏡が似合う人だよ。

「司……」

「司~、人間界を学んでどうするのぉ??」

朔が聞く。
それに司は答える。

「俺はいろんな世界について調べたい。いろんな知識を入れるのは良いと思うんだ」

司ってば何処までも真面目だなぁ。
僕はそんな事は思わない。

「ふーん。そっかぁ、頑張れ!」

応援する事なのか…?

「倖、父さんと母さんは…心配してたか?」

司が心配そうに聞いてくる。やはり家を出て来た事に少しの罪悪感を感じているらしい。
僕は、司に言う。

「…これ、父さんから手紙。心配しない親なんていないさ」

僕は父さんからの手紙を渡した。
司は眼鏡を押し上げながら読み始めた。
そして、読み終わると僕に返してくれた。

「そっか。…そうだ、朔」

「ん?何」

「美味しいと評判の店を見つけておいた。今日はその為にココに寄ろうとしたんだ」

「わぁい♪!美味しい店ぇ~」

「良かったら倖もどうだ」

「うん、行く」

僕はこの時思った。朔が司をメールやり取りの相手に選んだのは、美味しい店を探させる為じゃないかと。
だとしたら司は気づいているはず。
それなのに、探してあげてるなんて。
優しい所もしっかりあるんだなぁ。(それって優しいの…??)
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