Never Magic
そしてその夜。
僕は母さんの隣で寝ていた。
とても、嬉しそうな顔で。
母さんと一緒に寝れる嬉しさ。
と、何やら物音が聞こえた。
父さんでも入ってきたのだろうか、と僕は思った。
でも、それは違った。
入ってきたのは知らない人。
知らない人は赤ん坊の僕をゆっくり抱き上げると部屋から出て行こうとする。
どうして…僕、この後どうなったの?
そんな不安な気持ちで見ていた。
僕を抱き上げている人は、外へ出ると車の助手席に僕を乗せた。
そして、そのまま発車。
僕は誘拐されたのだ。一歳の時に。
一歳だから記憶がないのは当たり前。
でも、この男の人は?何で僕を誘拐したの?

『はい、一歳の記憶はココまで』

「え……どうして、この後は?この後僕はどうなって」

『魔界と人間界の時間は少し誤差があります。なので、次は二歳から。さ、この事件を知ってどう?』

「どうって…驚い…た」

『だろうねぇ。一歳の時に誘拐だもんな。それで、続きが見たいの?』

「見たい!」

『どうして?この後君は恐ろしい物を目の当たりにするんだよ?』

「でも、真実が知りたいから…」

『ねぇ、君はNever Magicって何だと思う?』

「Never Magicは、僕が生まれつきに備わった不思議な体質の事だよ。僕はたまたまそれにかかっただけだ」

『違うね。皆から嘘を吹き込まれているよ』

「?…どういう事」

『Never Magicなんて魔界に存在しないからだよ』

「!!!?」

『おっと、時間がなくなるから早く二歳から四歳の記憶を見に言った方が良いよ。二歳から四歳の道はこちらから…』

「まっ…」

待ってと言おうとしたら、消えてしまった。
新しく出来た道。
二歳から四歳の道。
一歳の記憶では、僕が攫われた。知らない人に。
その後の自分がどうなったか、知りたいと言う気持ちがあった。
でも、逆に知ったら自分はどうなるのだろうか、と言う不安もあった。
でも、進まずにはいられなかった。
僕は不安な足を歩かせた。
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