Never Magic

「…っきー!」

誰かが僕を呼ぶ声がした。
うっすらと意識が返ってくる中、僕に何度も呼びかける人の姿が見える。

「ゆっきー!起きて!もう、いつもなら起きてくるじゃん!司はもう起きてるよ!」

「朔、倖は疲れてるんだろ」

「そうなのかな…?」

「うる…さい…」

「あ!ゆっきー!」

僕は五月蝿さに起きた。
目を開けると、朔と司がいた。

「もうビックリしたんだよー。ゆっきーがまだ起きてこないから」

「そっか…ご免ね…」

「いや、誤る必要はない」

司がいつも通り、眼鏡を押し上げながら言う。
僕は夢の事を思い出した。
けれど、朔や司に聞く勇気がなかった。
本当なのか、嘘なのか…信じるのは僕自身…。
リアルな夢だと言えばそうだった。
けれど、所詮は夢。
かと言って、やはりあんなにリアルな過去があるだろうか。

「ゆっきー?どうしたの?そう言えばゆっきー、魘されてたよ。大丈夫?」

「うん…平気…」

返事は平気と言っているけれど、やはり気分は良くない。

「…気分転換に水でも飲め」

司に渡されたペットボトルを受け取る。

「有難う」

僕はそれを少しずつ飲んだ。
少し落ち着いた気がした。

「ゆっきー、大丈夫?本当に大丈夫?」

「うん、平気。着替えたら下に行くから」

「うん…」

そう言うと、朔と司は下へと先に行った。
僕は汗で少しぬれてしまった服を脱ぎ、普段着に着替えた。
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