未来へのボール*SUMMER*

「「「…………。」」」

それから約10秒ほど沈黙。


しびれを切らしたのか、

ラルはため息をついた。


「…………1回。1回だけ見せます。」

「それで覚えて下さい」と後に付け足す。


マジで?マジで見してくれんの??

めっちゃ嬉しい俺。

だって俺、ラルのプレー超好きだから。


ドリブルに羨ましい程のキレがあって、

シュートの形はどんな体制でも綺麗。


中学の頃、馬鹿みたいにずっと見てた。

ただ、ずっと。"橘羅琉"を見てきた。

あの夏の大会までは。


「………誰か、ディフェンス役を…。」

ボールを持ったままラルは

ボソッと呟いた。


「あ、じゃあ俺が!」


「レム先輩は見てて下さい。

あたし、本当に1回しかやりません。」

他の奴らは皆自主練中。


自主練しながらもラルを

チラチラ見る奴もいるけど(怒)。


「俺がディフェンスやる。」

誰かにやられる前に、

俺がやってやるし。





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