未来へのボール*SUMMER*

―――休憩の残り時間が5分を切った。

ラルは、まだ来ない。


《ジー…ジー…》

体育館は、静かで。

虫の鳴き声が響く。


ラルは、来ないのだろうか?

いや、絶対に来る。


「――すみませんっ。遅れましたっ!」

ホラ、来たじゃん。


「お前…何してたんだよ?」


「へ?な、何って…アップ?」

……………アップ?


「お前…1時間近くアップしてたのか?」


「いや、走っただけ…。」

1時間かけて…。


「張り切り過ぎだし(笑)。」


「なっ…。最近運動してないからで…。」


「分かった分かった。」

思わずラルの頭を撫でる。


あ、なんかヤベェな。

ラルの髪の毛が、気持ちいい。


「ちょっ…サクト先輩!?」

焦り気味のラルが、可愛く見えて。


つい笑顔になってしまう。






< 97 / 156 >

この作品をシェア

pagetop