希翼[キオク]
――――
あたしは翼の前まで来ると
持ってきた花束を供え
その場にしゃがんだ
「翼、また来ちゃったよ。そういえばあんたもうすぐ13才になるね
あのときのあたしより年上だ
はやいな-
ねぇ翼、何回聞いてるかわかんないけど
あたしはあのときどうしているのが正しかったのかな
あたしは今こうしてあれからいろんな後悔をして自分を責め続けて今日まで元気に生きてきた
それは翼にとって
嬉しいことなの?
あたしは生きていてもいいの?」
返答のあるはずない翼にむかって
あたしはくるたびに同じ問いかけをしている
何年たっても
その答えは見つからない
周りの人は
あたしが生きていればそれだけでもよかった
とか言うけど
あたしが助かったって仕方なかったのよ
翼も
助からなければいけなかったのに…
あたしは鶴を握りしめ
その場で一人
涙を流した
.