希翼[キオク]
お姉ちゃん...
その聞き覚えのある声は
遥か後ろの方から聞こえてきた
後ろを向くと
遠くの物陰に
小さい子がたっているかのように見えた
誰かなんて
すぐわかった
「翼…!」
翼は
あたしをみてほほえんでいた
あたしが翼の元へ行こうと立ち上がると
翼は悲しそうに首を振った
「生きて…
お姉ちゃんには
生きていてほしい
翼は
なんにも恨んでなんかいないんだよ
恨む理由がどこにあるの?
そんなに自分を責めないで
ほら
笑ってよ
お姉ちゃんは
笑顔が一番だよ」
翼はそういうと
後ろを向いて歩き出した
「え…ねぇ...」
あたしが声をかけると
翼は静かに景色に溶けていった
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