希翼[キオク]
「あのね-今日かけざんの5の段のテストがあるんだ-」
「ふ-ん
翼いえるの-?」
「言えるよ-!たくさん練習したんだからッ
聞いててね-
5いちが5
5に10…」
あたしが
少しからかうと
翼はむきになって
でもどこか嬉しそうに
5の段を言い始めた
あたしにとって
九九は今となっては言えて当たり前だけど
翼は
必死に覚えてるんだな-
と思った
毎日こんなたわいもない
普通の会話を楽しみながら
二人で学校に行く
「じゃ-ね♪」
6年は3階
2年は1階
階段のところで
わたしたちは別れる
これが
翼をみた最後だった…
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