希翼[キオク]



「あのね-今日かけざんの5の段のテストがあるんだ-」


「ふ-ん
翼いえるの-?」


「言えるよ-!たくさん練習したんだからッ
聞いててね-
5いちが5
5に10…」


あたしが
少しからかうと
翼はむきになって
でもどこか嬉しそうに
5の段を言い始めた


あたしにとって
九九は今となっては言えて当たり前だけど
翼は
必死に覚えてるんだな-

と思った



毎日こんなたわいもない
普通の会話を楽しみながら
二人で学校に行く









「じゃ-ね♪」


6年は3階
2年は1階

階段のところで
わたしたちは別れる







これが




翼をみた最後だった…





.
< 8 / 83 >

この作品をシェア

pagetop