ライオン
健次は視線の主を直接見た事は無かったが、不思議と確信を持って近づいていた。

健次自身はこの違和感に気付いていなかったが。

健次がベンチの前に立つと、そこには黒髪と白いワンピースがよく似合う、小柄な少女が座っていた。

人の気配に気づいたんだろう。

少女が目線を上に向け、健次と目が合う、と同時に健次がベンチを蹴る。

「お前だろ!最近俺を付け回してんの!」

少女は健次の突然の行動に驚いたのか、目を何回も瞬いて、黙って健次を見つめる。

「おい!何とか言えよ!
ガキでも調子乗ってると容赦しねぇぞ!」


俺にだって良心がない訳じゃない。
少しやりすぎな気もするが、これだけ脅しとけば二度と近づかないだろ。

だが、次に少女が取った行動は、健次を困惑させた。

「私が見えるの!?」

そう言って、満面の笑みで健次に微笑みかけたのだった。
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