ライオン
『健次(けんじ)!早く銃を拾うんだ、健次!!』

親友が、銃を拾おうと抵抗する強盗を必死に抑えながら、俺の名を叫んだ。

俺は銃と親友に交互に視線を動かすが、肝心の足が震えて動けない。
やがて強盗は親友を振り払うと、目の前にいた俺を突き飛ばし銃を拾う。

俺は尻餅をついた体勢になり、そのまま立ち上がれない。
そこから先の光景は、まるで全てがスローモーションのようにゆっくりと、俺の眼前に映し出される。

(……止めろ!)
銃を拾った強盗に向かって、親友が飛び掛かる。

(もう見たくないんだ!
止めてくれ!)
強盗は素早く振り返り、親友に銃口を向ける。

(何でこんなに近くにいるのに、俺は……俺は……、震えて動けないんだよ?
誰か教えてくれよ!くそったれが!!)

……!!!


銃声が店内に鳴り響き、親友がゆっくりと地面に倒れる。

「裕太(ゆうた)ぁぁぁぁぁ!!」

(はぁ……、また……、この夢か……)

もう何度目だろうか?

また変わらぬ結末の夢を見て、現実へと引きずり戻されるように朝を迎える。
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