ライオン
二人は連れ添うように店を後にする。

健次と湊のあいだには、少し嫌な沈黙が支配していた。

あてもなく歩いていると、湊が不意に立ち止まる。

「どうした?」
「考えた、貴方へのお願い」

「お願い……?
あぁ、俺が死ぬかどうかって話?」

今日はもう何度目だろうか?
湊は呆れた表情で健次に指を差す。

「いい!
お願いだから、私の為に死ぬとか簡単に口にしないで!
それに健次の事、割と気に入ってるのよ、私」

「じゃぁ、何だよ?
悪いが金ならさっきの飯で無いぞ?」

湊は口元は笑っていたが、目は笑っていない。
つい一時間程前からの浅い付き合いだが、こいつは判りやすい。

「それはもういいわ。
3つお願いを聞いてくれたら、それでいいの。
さっき奢ってくれたから、あと2つね。
行くわよ健次」

そう言って、湊は健次の腕を強引に掴んで走りだした。

「お、おい!急に引っ張ったら危ないって!」
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