ライオン
そして俺は今、お菓子の並べられた陳列棚の前に立っている訳なんだが……。

「健次、店員こっち見てない?」

「……見てないよ」

湊が俺の横で10円のガムをポケットに忍ばせる。

まぁ、簡単に言えば万引きだ。
それぐらい買ってやると言ったんだが……。

「それじゃぁ、スリルが味わえないじゃない!」だそうだ。

くだらない……。
その一言が喉まで出かかったが、言わないでおいた。
まわりから見れば、黙って付き合ってる俺も大概くだらないからな。
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